健康あっての教師人生

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ユリシーズ 394/MAY.5

 ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』(1922年)は、20世紀に英語で書かれた中で最高の小説だ。ホメロスの『オデュッセイア』(古代ギリシアの長編叙事詩)をアイルランドの都市ダブリンでのある一日—1904年6月16日—の出来事として作り変えたもので、ホメロス版の主人公オデュッセウスは、レオポルド・ブルームという、お世辞にも英雄とは言えない、妻に浮気された中年の広告セールスマンに置き換えられている。この男が使い走りをしたり仕事の約束を取りつけたりしながら長い一日を送り、ようやく家に帰るというストーリーだ。

 ブルームは、一見すると平凡そうだが、作中で出会う何人もの変な登場人物たちのほぼ全員に寛容さと度量の広さを示して、英雄的な人物として描かれている。何気ない日々の雑事を通して、彼は現代世界でおそらく唯一可能なヒロイズムである、日常的ヒロイズムを実践しているのだ。しかも、自分は部外者だという意識を常に抱いているもののーーー彼は、カトリック信者が圧倒的多数を占めるアイルランドで暮らすユダヤ教徒だーーー、ブルームはいつも楽観的で、不安を払いのける。

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 ジョイスの『ユリシーズ』と言えば、登場人物を丹念に描写していること、他の文学作品や芸術作品にそれとなく触れた箇所が多いこと、言葉の斬新な使い方にあふれていることでも有名だ。ジョイスは前編を通じて、文学のジャンルや形式を、脚本や広告文から古英語に至るまで変幻自在に操っている。ただ、この小説で有名なのは、意識の流れという叙述技法を大々的に使っていることだろう。これによってジョイスは、登場人物が心の中で思ったことを、順序づけたり整理しあtりせず、そのままの形で提示しようとした。この技法はモダニズム文学の特徴となり、ヴァージニア・ウルフやウィリアム・フォークナーなど多数の作家たちに影響を与えた。

 当然ながら、『ユリシーズ』は読者にとっては読み進めるのが難しく、中でも、最終章はたいへんなことで有名だ。この章では、ブルームの妻モリーの心のうちがつづられる。あてどなく延々と続くモリーの思いは2万4000語を越えるが、それがわずか八つの長大な文で区切られているにすぎない。読みづらいのは確かだが、それでも最終章でジョイスはモリーの心情を実に見事に描写しており、とりわけ最後の数行では、モリーが浮気をしていても本心では夫を愛していることが、次のように語られる。

 それで彼あたしにいいのかいって聞いたのyes山に咲くぼくの花よyesと言っておくれって言うからあたしまず彼の背中に両腕を回してyes彼を抱き寄せてあたしの胸を押しつけたらいい匂いがしてyes彼の心臓ものすごくドキドキしててyesあたしは言ったのyesいいわよってYse.


1 『ユリシーズ』には(ほのめかし程度がほとんどだが)性的描写があったため、アメリカでは、わいせつだとして12年近く出版を禁止された。

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