
小諸なる古城のほとり
雲白く遊子悲しむ
緑なす蘩蔞は萌えず
若草もしくによしなし
しりがねの衾のおかべか
日に溶けて淡雪流る
あたゝかき光りはあれど
野に満つる香りも知らず
浅くのみ春は霞みて
麦の色わづかに青し
旅人の群れはいくつか
畠中の道を急ぎぬ
暮れゆけば浅間も見えず
歌哀し佐久の草笛
千曲川いざよふ波の
岸近き宿にのぼりつ
濁り酒濁れる飲みて
草枕しばし慰む
千曲川旅情の歌 一 島崎藤村著
あらすじ
明治34年刊行の第四詩集『落梅集』所収の作品。第一詩集『若菜集』、第二詩集『一葉舟』、第三詩集『夏草』を経て、第四詩集『落梅集』では、20代後半に差し掛かった島崎藤村の、青春への別れを感じさせせる作品が多数収録されている。

音読をたのしもう
美しい信州の自然と早春の冷たい空気、藤村の旅愁などを感じとりながら読んでみたいですね。

できれば暗唱したうえで繰り返し声に出して読んでみることをおすすめしたい作品です。


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