子供の頃『枝雀寄席』という落語のテレビの番組が好きだった。
深夜の番組だったけれど、それが見たいがために夜更かしして起きていた。出ばやしの太鼓が鳴るのがきこえると、『枝雀寄席、はじまった』

と母の声。テレビのある父の寝室のベッドに、家族五人がわくわくと集まった。父は落語を見ている時、入り込んで、枝雀さんが乗り移ったかのような、ひょっとこみたいな笑い顔になって見ていた。怒りっぽい父が、この時は、しんからおもしろそうにしていて、そういう父のそばにいるのもうれしかたった。
今でも、鼻にかかった『すびませんねえ』という、独特のフレーズを思い出すだけで、あのぎょろっと目をむいた丸い顔が浮かんで、ふっとゆるんで笑ってしまう。

二度ともどらない時間。家族みんながそろっている深夜の、わくわくとした空気までよがえってくるから、よけいに。
今日は何の日
🟢桂枝雀さんの命日
夏のかんかんでりを見ると『おひーさんが、かーーーーっ!』と叫んでいた、枝雀さんの声と一緒にアツーーイ気持ちになる。もうあの落語を聞けないのが、ほんとうに残念。

山道のはじっこに、スミレの花。ひとつ見つかると、ここにも、あそこにも、小さいうすむらさき。たくさんつんで、つくるのは、スミレの花入りの、春のちらしずし。

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