健康あっての教師人生

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五重塔 幸田露伴 320/APR.15

どうせ馬鹿のっそり十兵衛は死んでもよいのでござりまする、腰抜鋸のように生きて居たくもないのですわ、其夜からというものは真実、真実でござりまする上人様、晴れて居る空を見ても灯光の達かぬ室の隅の暗いところを見ても、白木造りの五重の塔がぬっと突っ立て私を見下ろして居りまするわ、とうとう自分が造りたい気になって、到底及ばぬとは知りながら毎日仕事仕事を終わると直に夜を籠めて五十分一の雛形をつくり、昨夜で丁度仕上げました、

見に来て下され御上人様、頼まれもせぬ仕事は出来て仕たい仕事は出来ない口惜しさ、え、不運ほど情けないものはないと私が歎けば御上人様、なまじ出来ずば不運も知るまいと女房めが其雛形をば揺り動かしての述懐、無理とは聞こえぬだけに余計泣きました、御上人様御慈悲に今度の五重塔は私に建てさせて下され、拝みます、こ此通り、と両手を合わせて頭を畳に、涙は塵を浮かべたり。

五重塔 幸田露伴

五重塔を自分に建てさせてほしいと切願する印象的な場面です。格調の高い大和言葉の上に、自由な発想でふりがなが付され(原文)、さらに漢語も効果的に使われています。

五重塔 幸田露伴

読んでも、視写をしても心地よくなれる、まさに最強の日本語といえます。『女房(かか)』『其雛形(それ)』といった表現も印象的です。作者の日本語力の凄まじさをひしひしとかんじますね。

幸田露伴は漱石と同じ年で、両者とも文章力は卓越していますが、表現方法は大きく異なることがわかります。こんな大和言葉を自由に操って文章を書いてみたいですね。

そして、主人公のように誇りを持ち妥協を許さない職人がいたから今の日本があるとうことを再認識させられます。(おわり)

五重塔 幸田露伴

 腕は確かだが世渡り下手で、愚鈍な性格から世間で『のっそ』などと甘く見られている大工の十兵衛。ある日、五重塔が新しく建立される計画を耳にし、一世一代の仕事に棟梁として取りかかりたいという熱望にかられる。

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