芳一は声を張り上げ、激しい海戦の歌をうたったーーー琵琶を以て、あるいはかじを引き、船を進める音を出さしたり、はッしと飛ぶ矢の音、人々の叫ぶ声、足踏みの音、兜にあたる刃の響き、海に陥る打たれたもの音等を、驚くばかりに出さしたして。その演奏の途切れ途切れに、芳一は自分の左右に、賞讃の囁く声を聞いた、ーーー『何という巧い琵琶糸師だろう!』
耳なし芳一 小泉八雲

主人公の芳一は、琵琶法師として平家物語を引き語ることで、霊たちの魂を鎮める修行をしています。その音楽性が物語の一つのテーマ。場面は夜の墓場です。そこに轟く芳一の声、琵琶の音、矢の音、叫ぶ音、足踏みの音、刃の金属音・・・。
様々な音の響きが激しく重なり合っている様子や、盲目の芳一の心情などを頭に思い描き読んでみると共感できます。


あらすじ
琵琶法師の芳一は平家物語を弾き語る達人。クライマックスの壇ノ浦の戦いの場面では『鬼神すらも涙をとどめ得なかった』と称賛されるほどだ。
そんなある日に夜、突然現れた一人の武士に頼まれた芳一は、屋敷らしき場所へ連れて行かれて多くの人の前で琵琶を弾く。
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