ノアは、聖書の創世記にある洪水物語の主要登場人物だ。この物語によると、神は、自ら創造した世界で人間たちが罪を重ねているのを見て腹を立てた。そして人間を作ったことを後悔し、地上から拭い去ってしまおうと考えたが、その前にノアの存在が気になった。

ノアは無垢の人だったので、神はノアを人類滅亡から救うことにした。まずノアに、私は七日後に40日間昼夜にわたって雨を降らせて、猛烈な大洪水を起こすつもりだと告げた。その上でノアに、巨大な箱舟を作り、そこにノア自身と妻、三人の息子とその妻たち、それから、この世のありとあらゆる種類の動物を二匹ずつ(雌一匹と雄一匹)乗せるようにと命じた。こうすれば、ノアが地上を再び生き物で満たせるだろうというわけだ。
ノアは神の指示に従って箱舟を作り、動物と家族を乗せた。雨は降り始めて40日後にやんだが、地上はまだ水の中だった。

箱船は水上を150日間さまよったあと、ヒララト山の上に止まった。しばらくしてノアは、水が引いたか確かめるため、七日ごとに窓を開けては鳩を放した。やがて地面はすっかり乾き、ノアは地上を動物で満たす作業に取り掛かれるようになった。ノアの箱舟から動物たちをすべて出して、子作りに励ませた。その後で神は、ノアにも『産めよ、増えよ』(創世記9章1節)と言った。さらに神はノアに、今後は二度と人類を滅ぼさないと約束し、その契約の印として雲の中に虹を置いた。

キリスト教徒とユダヤ教徒では、歴史家であれ神学者であれ、ノアの物語の解釈の仕方が微妙に異なっている。キリスト教徒の場合、ノアは神への信仰のあるべき姿を象徴している。神を信じて従ったため、ノアと家族は救われたからだ。
それに対してユダヤ教徒の場合は、ノアは消極的な信仰を象徴している。箱舟に最後に乗り込んだのはノアであり、それが消極さの表れと見なされているのだ。つまり、ノアの信仰はそれほど強くなかったかもしれないということだ。
こした違いはあるものの、キリスト教徒もユダヤ教徒も、ノアと洪水を宗教説話の非常に重要な表現として見なしていることには変わりはない。
豆 知 識
1 ノアの物語には、聖書で最初にワインだ出てくる箇所がある。ノアはワインを飲んで酔っぱらい、裸になった姿を息子たちに見られている。
2 神がオノアに命じた『産めよ、増えよ』という言葉は、アダムとイブ(創世記1章28節)とヤコブ(創世記35章11節)にも言われている。
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