
ゴーシュは弓をかまえました。かっこうは『くっ』とひとつ息をして『ではなるべく永くおねがいいたさします。』といってまた一つおじぎをしました。
『いやになっちまうなあ。』ゴーシュはにが笑いしながら弾きはじめました。するとかっこうはまたまるで本気になって『かっこうかっこう』とからだをまげて実に一生けん命叫びました。ゴーシュははじめはむしゃくしゃしていましたがいつまでもつづけて弾いているうちにふっと何だかこれは鳥の方がほんとうのドレミファにはまっているかなという気がしてきました。どうも弾けば弾くほどかっこうの方がいいような気がするのでした。
『えいこんなばかなことしていたらおれは鳥になってしまうんじゃないか。』とゴーシュはいきなりぴたりとセロをやめました。
するとかっこうはどしんと頭を叩かれたようにふらふらっとしてそれからまたさっきのように
『かっこうかっこうかっかっかっかっかっ』と云ってやめました。
セロ弾きのゴーシュ 宮沢賢治著

あらすじ
町の楽団でセロを担当しているゴーシュは、音楽会で発表する曲を練習しているが、下手なままで団長からきつく叱られる。家に帰って練習していると、猫やかっこう、狸の子、のねずみの親子が、毎晩かわりばんこにやってきた。動物たちと共に練習する日々を重ねていく。

音読をたのしむ
本当の幸せとは何なのか。作品を貫くシンプルでもっとも難しいこのテーマを、音読しながら探ってみましょう。今月は大好きな宮沢賢治を紹介していきますね。明日は、『よだかの星』です。


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