
小十郎は油断なく銃を構えて打つばかりにして近寄って行ったら熊は両手をあげて叫んだ。
『おまえは何がほしくておれを殺すんだ。』『ああ、おれはお前の毛皮と、胆のほかにはなんにもいらない。それも町へ持って行ってひどく高く売れると云うのではないしほんとうに気の毒だけれどもやっぱり仕方ない。けれどもお前に今ごろそんなことを云われるともうおれなどは何か栗かしだのみでも食っていてそれで死ぬならおれも死んでもいいような気がするよ。』
『もう二年ばかり待って呉れ、おれも死ぬのはもうかまわないようなもんだけれども少しし残してた仕事もあるしただ二年だけ待ってくれ。二年目にはおれもおまえの家の前でちゃんと死んでいてやるから。毛皮も胃袋もやってしまうから。』
小十郎は変な気がしてじっと考えて立ってしまいました。熊はそのひまに足うらを全体地面につけてごくゆっくりと歩き出した。
なめとこ山の熊 宮沢賢治著
なめとこ山の熊 あらすじ
なめとこ山の小十郎は、家族を養うのに熊をうつあしかない。だが、本当は熊にはすまなく🐻思っていた。なめとこ山の熊もまた、そんな小十郎に親近感を抱いていた。ある日、小十郎と対峙した熊が2年間だけ自分を殺すことを待ってほしいと懇願する。
小十郎は熊をみのがしてやった。2年後、約束っどおり、熊は小十郎の家にやってきて息絶えるのだった。

📚音読を味わおう
『猟師を辞めて木の実だけ食べて死んでいきたい』と切々と語る小十郎の心境はいかばかりでしょうか。
一方で『おまえの家の前で死んでいてあげるよ』と小十郎に伝えた熊の心境も想像して読んでみるといいですね。

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