しかたがないので、たぬきはまた先に立って、こんどは何でも早く向こうの山まで行きつこうと思って、うしろもふり向かずにせっせと歩いていきました。うさぎはそのひまにふところから火打ち石を出して、『かちかち。』と火をきりました。たぬきはへんに思って、『うさぎさん、うさぎさん、かちかちいうのは何だろう。』『この山はかちかち山だからさ。』『ああ、そうか。』と言って、たぬきはまた歩き出しました。そのうちにうさぎのつけた火が、たぬきの背中のしばにうつって、ぼうぼう燃えだしました。たぬきはまたへんに思って、『うさぎさん、うさぎさん、ぼうぼういえのは何だろう。』『向こうの山はぼうぼう山だからさ。』『ああ、そうか。』とたぬきが言ううちに、もう火はずんずん背中に燃えひろがってしまいました。たぬきは、『あつい、あつい、助けてくれ。』とさけびながら、夢中でかけ出しますと、山風がうしろからどっと吹きつけて、よけい火が大きくなりました。たぬきはひいひい泣き声を上げて、苦しがって、ころげまわって、やっとのことで燃えるしばをふり落として、穴の中にかけ込みました。うさぎはわざと大きな声で、『やあ、たいへん。火事だ。火事だ。』と言いながら帰っていきました。
かちかち山 楠山正雄著より引用
かちかち山 あらすじ
かちかち山 楠山正雄
いたずら好きのたぬきを捕まえたおじいさんは、おばあさんにたぬき汁にするように言いつける。
おばあさんはたぬきの口車に乗せられて、つい縄をほどいてしまい、殺されてしまう。
悲しむおじいさんをみかねた白うさぎが、おばあさんの敵うちを引き受ける。
引用は、大正時代に児童雑誌『赤い鳥』に参加した作家・楠山正雄が再話したもの。

音読をたのしもう
『ぼうぼう山だから』の答えに簡単に納得してしまうたぬき。漫才のかけ合いのようで吹き出してしまいそういなりますね。
現代の価値観では理不尽とも思える場面も出てきますが、あくまでも昔の童話の世界とわりきって読んでみてください。

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